Webマーケターのためのマーケティング入門
2章:値決めと観察
(最終更新日:2022.10.30)
■「いくらにしよう?」
フリーマーケットでも何でもいい。売り物が決まっていて、お店を出す場合に悩ましいのが値決めだ。
価格の付け方は多種多様で、それによって店の売上、利益も決まってしまう。
稲盛和夫さんも「値決めは経営」と言っている。
素人だと勢いで決めることも多いが、実は最重要決定事項の1つなのだ。
値決めの基本的な方法は最後にまとめるとして、まずは自分の周りの物の価格を観察してみよう。
例えば、Udemyセールでは20,000円近い商品を2500円程度に値下げするセールを定期的に行っている。
これがいつも2500円だったら、「チャンスだ!買おう」という気持ちにはならないだろう。
これは、一種のテクニックで、20000円が通常の価値だとアンカリングされているからである。
価格に限らず、いつもWhyを気にして観察していれば、買い物には常に新しい発見ができる。
ショッピングはマーケティングテクニックの宝庫なのである。
■ついつい寄ってしまうプライシング(価格)
スシローの大トロ(100円)やハンバーガー(110円)は、原価率が高く、ほぼ利益が出ない。 コンビニのコーヒーも原価率50%と言われている。何故、この価格で販売できるのか。 それは、その商品が客寄せパンダで、他の原価率の低い商品で利益を得られるからだ。 100円のコーヒーだけでなく、チョコレートも買うなんて事はよくある話。合計で利益が出る。 コーヒーなどは毎日飲むものなので、客寄せには特に良い。習慣として店に来てくれる。 そして、レジに進むまでに商品を見て、チョコレートを買う。まんまと乗せられてるのじゃ。 また、チェーンじゃ無い場合も、実はこの作戦は有効なのだ。 人は繁盛してる店に行きたがる。目的のその人以外を集客する効果もあるのだ。 ECサイトなども、この方法を取る。最初に高いものを見せると離脱するからだ。 集客したら、別の部分で利益を出す工夫をしよう。
■他を安く見せるためのプライシング(価格)
例えば、レストランに行ったとして、Aランチ(1700円)、Bランチ(1000円)、Cランチ(500円)があったとする。 Aランチはケーキから、コーヒー、サラダまでついている。Bランチはケーキ無し。Cランチはメインの丼だけ。 貴方はどれを頼むか。おそらく7割方の人はBランチを注文する。もし、BランチとCランチだけだったとするとどうなるか。 Cランチを頼む人が半分くらいに増える。お客様に買って欲しい商品の1つ上の商品を設定することで、売れるようになる。 これをアンカリングという。電気屋の入口で高額なテレビを置くのと同じ理由。お得に感じるのだ。 (IKEAなんかは、入口でテーブル等の高額の家具を見せ、終盤に小物を見せるレイアウトになっているはずだ)
■勉強代も含めたプライシング(価格)
自分がそれをすることで「スキルアップ」につながる場合、期間を決めて無料で依頼を受けることがある。 加えて、実績にもなる(Web上に成果が上がる)ので、次の仕事につながりやすくなる。初めからお金を得ようと思わない。 まずは、安価に仕事を受けるのも手だ(但し、期間はキッチリ決める)。 Udemyなどでも同じことは言える。最初は無料の動画を解放し、とにかく見てもらう。見てもらわなければ始まらない。 知り合いが行っていた方法だと、まず自分の友人に無料クーポンを配り、レビューを書いてもらっていた。 レビューから改善ができるし、評価が良ければ次の仕事につながる。損して得とれじゃ。
■教科書的なプライシング
最後に、教科書的な価格の決め方を以下にまとめる。 代表的なものに、①~④の決め方がある。
①原価に利益を上乗せした価格(コストプライシング)
②マーケットに合った価格(マーケットプライシング)
③ファイナンスで算出した価格
④浸透価格(ペネトレーションプライシング)
①は説明する程でもないが、作るのにかかった原価(材料費+人件費)に 例えば利益を50%上乗せして売るということである。100円のジュースを150円で売るという具合である。
②は相場である。競合の商品と同じ位の価格で販売する。 商品特性上、違いが出しにくいものが、これで決まる。 牛丼なら400円、おにぎりなら150円といった具合だ。
③は多少馴染みがないかもしれないが、不動産賃貸やITのシステム導入などで使われる。 あるシステムを導入したとして、人件費3人分(月150万円)経費節約できたとする。 年1800万円節約でき、10年は使えるから、1.8億円の価値がある。 ただし、一般的な年利が合ったり(その分のお金を他に投資してもお金は増えるので)、 システムを使わなくなるリスクを考慮すると、その分割り引く必要があり、 現在価値では1.2億円の価値になったとする。このシステムを6000万円で提供します。 「このシステムを入れれば、6000万円節約できますよ」という論理が成立し、価格が決まる。
④は、例えばプリンターや家庭用ゲーム機などがそれにあたる。 まずはユーザーを増やすため、ハードを利益度外視で売り、 後から、そこで使う消耗品やソフトウェア、ロイヤリティで利益を出す。 最初にユーザーを増やす重要性が高い商品、サービスで使われる。 最初に割引券を配りまくったウーバーイーツなども広い意味ではそれに当たる。 後から利益を出す仕組みである。
▼参考図書、サイト
「デジタルで変わるマーケティング基礎」 宣伝会議編集部編
ペネトレーション・プライシング
グロービスMBA用語集
アンカリング効果 マケフリメディア