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■第22話:Podとマルチコンテナの運用
(最終更新日:2025.05.29)
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「マルチコンテナを活用しよう」
コンテナを活用した開発や運用では、複数のプロセスやサービスを効率よく連携させる仕組みが重要だ。
PodmanはKubernetesと同様の「Pod」概念を備えており、複数のコンテナを単位としてまとめて管理できる。
本章では、Docker Composeとの違いや、Podを活用したマイクロサービスの構築方法、さらに将来的なKubernetes移行を見据えた運用の基本を解説する。
Podmanの特長を活かしたマルチコンテナ運用の基盤を身につけよう。
1.Docker ComposeとPodmanの違い
Docker ComposeとPodmanの違いは以下の通りにまとめられる。 Docker Composeでは、デーモン(root)が必要だが、Podmanは不要、PodmanはPodに複数コンテナをまとめられるなどと言った部分が異なる。
比較項目 | Docker Compose | Podman, podman-compose |
---|---|---|
実行方式 | Dockerデーモンが必要(rootで動作) | Podmanはrootlessで動作可能 |
定義ファイル | docker-compose.yml(YAML形式) | 同じくdocker-compose.ymlに対応 |
Podの概念 | なし(各コンテナは独立) | あり(複数コンテナを1 Podにまとめられる) |
互換性 | 極めて高い(公式サポート) | 高いが、一部Compose機能は制限されることがある |
Kubernetes連携 | Docker Desktop経由などで連携 | podman generate kubeでYAML出力可能 |
また、PodmanはDocker Composeと互換性を保つため、Podman Composeも使える。pipでpodman-composeをインストールしたら、 podman-compose upと、docker-compose upと同様のコマンドで複数コンテナを立ち上げることができる。
2.Podを使ったマイクロサービス構築
まず、Podについて解説する。 PodmanのPodは、KubernetesにおけるPodと同様の考え方になる。 つまり、同一ネットワーク・同一名前空間で動作する複数コンテナの集まりを意味する。 例えば、以下のような構成を各Podにまとめて構築することができる。
Podの構成例
Podを使うことで、マイクロサービスの単位を綺麗に分離しつつ、内部通信の効率化を計ることができる。 Pod内のコンテナは、localhostで通信できるため、サービス間通信が高速かつ簡単だ。
Podの構築コマンド
3.PodとKubernetesへのスムーズな移行
Podmanの最大の利点の1つにKubernetesと互換性が高いことが挙げられる。 Podmanでは、現在のコンテナやPod構成をKubernetes YAMLへ出力できる。 その際のコマンドは以下の通りである。 微調整は要るものの、ファイルはそのまま「kubectl apply -f my-pod.yaml」で Kubernetesクラスタにデプロイできる。
YAML出力
具体的な手順例としては、以下の通りになる。 これにより、開発→テスト→本番(Kubernetes)への移行が非常にスムーズになる。
- ■Podman -> Kubernetesの移行手順例
- Podman上でアプリをPodとして構成
- podman generate kubeでYAML化
- Kubernetesクラスタに適用
- 必要に応じてServiceやIngressを追加定義
そして、今回の要点、Podmanの特徴は以下の通りにまとめられる。
項目 | 内容 |
---|---|
Podの活用 | 複数コンテナをまとめて、1つのアプリ単位で管理可能 |
Composeとの違い | Docker ComposeはPodの概念なし、PodmanはPod前提 |
マイクロサービス設計 | サービスごとにPodを分けると保守・拡張性が向上 |
Kubernetes移行性 | podman generate kubeでYAML出力が可能で便利 |
4.まとめ
Podmanにおける「Pod」の活用は、マルチコンテナ構成を効率的かつ本番環境に近い形で再現するうえで非常に有効だ。 DockerではComposeによって複数コンテナを連携させるが、 PodmanではPodを使って同一ネットワーク・名前空間に複数のコンテナを直接まとめることができ、よりKubernetesに近い構成が可能だ。 これにより、開発段階から本番環境を意識した構築・運用が実現できる。 また、Podman Composeを活用すれば、既存のDocker Composeファイルをほぼそのまま利用でき、移行もスムーズだ。 Podの概念を理解し活用することで、スケーラブルでメンテナンス性の高いシステム設計が可能になる。
▼参考図書、サイト
podman
podman 公式サイト
podman desktop
podman desktop 公式サイト