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STM32入門(組み込み開発)

■第8話:DMAの使い方と高速化

(最終更新日:2025.02.13)

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「DMAを使って高速化しよう」

DMA(Direct Memory Access)は、CPUを介さずに周辺機器とメモリ間でデータ転送を行う仕組みで、 STM32において高速処理とCPU負荷の軽減に貢献する。 ADCではDMAを用いることで連続的なアナログ値取得が可能になり、UARTではバッファリングによる高速通信が実現できる。 適切な設定と割り込みを活用することで、リアルタイム性を確保しつつ電力効率を向上させることができる。


1.DMAの使い方と高速化

1.1 DMAの基礎知識

DMA(Direct Memory Access)は、CPUを介さずに周辺機器とメモリ間でデータ転送を行う仕組みだ。 STM32では、DMAコントローラを使用することで、CPUの負荷を軽減しながら高速なデータ転送を実現できる。 DMAの主な特徴として、CPUを使わずにメモリ転送が可能であることが挙げられる。 これにより、CPUが他の処理に専念できるため、全体のパフォーマンスが向上する。 また、割り込みを利用して非同期処理を行うことが可能で、複数のストリームを利用することで並列処理にも対応できる。

STM32では、ADC、UART、SPI、I2Cなど、多くの周辺機器でDMAを利用できる。 これにより、リアルタイム性の高い処理が求められるシステムにおいて、CPUの介入を減らしつつ電力効率の向上を図ることができる。

2.ADCやUARTでの実例

2.1 ADC(アナログ・デジタル変換)

ADCとDMAを組み合わせることで、CPUの介入なしに連続したアナログ値の取得が可能になる。以下の流れで実装を行う。 まず、ADCの設定を行う。連続変換モードを有効にすることで、一定間隔で自動的にデータが取得されるようになる。 次に、DMAの設定を行う。メモリへのデータ転送を行うため、ADCの変換結果を特定のメモリアドレスに格納するように設定する。 これにより、CPUが値を逐一読み取る必要がなくなり、処理負荷が低減される。

さらに、DMAの割り込みを利用することで、データ取得の完了を検出できる。 DMA転送が完了した際に割り込みを発生させ、処理をトリガーすることで効率的なデータ処理が可能になる。 以下は、ADCとDMAを組み合わせたサンプルコードだ。

ADCとDMAを組み合わせた実装

このように、DMAを利用することでCPUの介入なしに効率的なデータ収集が可能になる。

2.2 UART(シリアル通信)

UARTでDMAを活用すると、バッファリングを利用した高速なシリアル通信が可能になる。 これにより、CPUの負荷を抑えつつ、安定したデータ送受信を実現できる。

まず、UARTの設定を行う。ボーレートやパリティビットなどの通信条件を適切に設定することで、正確なデータ転送を保証する。 次に、DMAの設定を行う。送信バッファと受信バッファを適切に確保し、DMA経由でデータを転送できるようにする。 さらに、非同期処理を実現するために、割り込みやリングバッファを活用する。 これにより、データの受信と処理を並行して実行できるようになり、リアルタイム性の向上が期待できる。 以下は、UARTとDMAを組み合わせたサンプルコードだ。

UARTとDMAを組み合わせた実装

このように、UARTとDMAの組み合わせることで、CPUの負荷を抑えつつスムーズな通信が可能になる。

3.まとめ

DMA(Direct Memory Access)は、CPUを介さずにメモリと周辺機器間でデータ転送を行う仕組みで、STM32ではCPU負荷を軽減しつつ高速な処理を実現できる。 ADCとDMAを組み合わせると、CPUの介入なしにアナログ値を連続取得可能になり、 UARTではDMAを活用することでバッファリングによる高速シリアル通信が実現できる。 適切な設定と割り込みの活用により、リアルタイム性と電力効率を向上させることができる。 ぜひ実装に活かしてみよう。

▼参考図書、サイト

STM32マイコン公式日本語サイト  STマイクロエレクトロニクス
 「WindowsではじめるSTM32」 インプレスR&D 山本 小鉄